Actors of Juveniles　〜フィフィ編〜



第二話「旅の理由」



「ここでも情報なしかぁ…。」
フィフィは溜息交じりに空を仰いだ。
この世界へ来てから結構たったが、いまだ「あの人」の行方はわからない。
そもそも、この世界にいるのかどうかさえわからないのだ。
「あ、フィフィ。どうだったでふか？」
舌ったらずな声に呼び止められて振り返ると、手分けして情報を集めていた旅の友―ラキュリアがいた。
「う〜ん。ここには来てないみたい。」
「そうでふか…。まぁ気長に探すしかないでふね。」
「…うん。」
どこにいるとも知れない「あの人」の捜索を、ラキュリアは文句も言わず手伝っていた。
それは単純に、彼女が冒険好きであったこともあるし、フィフィのことを気遣っているのかもしれない。
フィフィもラキュリアの想いに気付いているようだが、今は彼女の好意に甘えているのであった。


話は数日前にと遡る。
「今日はここで野営にするでふね。」
「そうだね、テント出すからちょっとまっててね。」
そう言うが早いか、フィフィは愛用の巨大リュックサックの中からテントを取り出して、設営を始める。
「すごいでふね…。」
テントはかさばる上に設営が面倒なため、長旅をするものには好まれないのだが、
そんなことフィフィには関係ないようである。
あの細腕でどうやってあんな荷物が軽々ともてるのだろうと、ラキュリアは思うのだった。
「よし、できたよ〜。」
フィフィは相当な早さで設営を終えてしまった。
慣れているからなのか、早く寝たいからなのかはわからないが。
二人はテントに入ると、早速就寝の準備を始めた。
「あれ、ラキュリア着替えないの？」
フィフィは早速お気に入りのパジャマに着替えはじめていた。
「い、いや私はこのままでいいでふ。」
ラキュリアは多少後ずさりしながら言った。
フィフィの前で着替えをするのは避けたいからだ。
なにしろフィフィには「その気」があって、ラキュリアは彼女と知り合ったその日に襲われているのだから当然である。
「そのままだと寝苦しいよ？寝巻きならまだあるから貸してあげるよ。」
「でもモンスターとかが襲ってきたら大変でふし…。」
「大丈夫大丈夫。早々こないってば。」
そういえば、フィフィは今まで一人で旅をしてきていたはずである。
つまり、その間は夜も見張りを立てずにテントで眠っていたということだろう。
なんとまぁお気楽な…、とあきれを通り越して感心すらしてしまうラキュリアだった。
「なんだったらふぃふぃが着替えさせてあげるよ？」
突然、フィフィの顔がいいいたずらを思いついたときの子供の顔に変わる。
「え、遠慮しておきまふ…それじゃあ私は外の安全を確認してきまふから…。」
何とか逃げようとするラキュリアだったが、ノリノリになっているフィフィから逃れられるわけもなく…。


「うう…フィフィ酷いでふよ…。」
「え〜、着替えさせてあげただけじゃないの〜。」
結局、フィフィに無理やり脱がされ、着替えさせられてしまったラキュリアであった。
まぁ、それだけですんだのが救いだが。
フィフィのほうが多少背が高いため、ラキュリアにとっては少しぶかぶかだが、それがかえって可愛く見えた。
「そういえば不思議な服でふね。」
ファンタジー世界に生きるラキュリアにとって、可愛い絵がプリントされたパジャマは珍しいものなのだろう。
「ああこれはね。あの人のお気に入りなの。」
「そうなんでふか…。」
「あの人」…フィフィがあらゆる世界を旅する理由。
他の世界から来たと言うフィフィの話を、最初は信じられなかったラキュリアだが、
フィフィを見ているとなんとなく納得できてしまうのだった。
「あの人」もまた、フィフィのいた世界、ラキュリアの住むこの世界では無いところの生まれで、
今のフィフィと同じくあらゆる世界を飛び回っているのだという。
探し出すのが容易でないことは、想像に難くなかった。
このパジャマも、「あの人」の世界のものなのだろう。
「これはその人からもらったものなんでふか？」
「ううん、あの人のを真似てママに作ってもらったんだ。」
「なるほど…。」
フィフィの「あの人」への想いが相当なものであることを再確認したラキュリアであった。
「その人ってどんな人なんでふか？」
「うーんとねぇ一言で言えば狼さんかな？」
「…はい？」
「かっこよくて、自由で…ちょっと強引なの。」
最後に少しだけ顔を赤らめるフィフィ。
あまり色恋沙汰に縁の無いラキュリアでも、フィフィの「あの人」に対する想いは容易にわかった。
「あれ、そういえば…その人が男か女かも聞いてなかったでふね。」
「あ、言ってなかったっけ。女の人だよ〜。」
やっぱりか…、とラキュリアは溜息をつく。
もしかしたらフィフィが「そっちの道」に走ったのも「あの人」のせいかもしれない。
「あの人」に会えたら文句の一つでもいってやろうかと思うラキュリアであった。
「ふぃふぃはあの人にちょうきょうされちゃったの。それでいてふぃふぃをおいてどっか行っちゃうんだもん、
　ひどいよね〜。」
「………。」
ラキュリアが思っていたことはどうやら正解のようだ。
「だから絶対見つけだして、あの人の恋人になるの。」
「……、そ、そうでふか…。」
フィフィが誰を好きになろうがそれは自由なのだが、知り合ったばかりの女性にいきなり襲い掛かるのはやめてほしい、
そう思ったラキュリアだった。
「それで、その人がフィフィの世界からいなくなったのはいつなんでふか？」
「うーんと、もう5年も前になるかなぁ。」
「5年でふかぁ。結構前でふね…ってフィフィ今何歳でしたっけ？（汗）」
「え、16歳って言ったよ〜。」
「………。（滝汗）」
そうなると「あの人」は10歳前後のフィフィを「ちょうきょう」したことになる。
激しく頭痛がしてきたので、もう「あの人」について聞くのはやめようと思ったラキュリアであった。
「……一つだけいいでふか？」
「え、何？いきなり改まっちゃって。」
「5年も経ったら、人間は変わりまふ。もしかしたらその人はフィフィのことを覚えてないかもしれないし、
　他に恋人がいるかもしれない。
　それどころか、全然違う人になっているかもしれない…。
　それでもその人を探すんでふか？」
ラキュリアの真剣な問いに、フィフィは迷うことなく。
「うん。あの人がどこにいようと、必ず探し出して見せるんだから！」
と、力強く言った。
「…いい答えでふね。」
フィフィの答えに、ラキュリアは「あの人」を絶対探し出してあげよう、と思った。
「さて、そろそろ寝まふかね。」
「うん、そーだねー。」
さて寝ようかと横になったラキュリアに覆い被さってくるフィフィ。
「………何をしてるんでふか。（冷や汗）」
「なんかあの人のこと話してたら、えっちな気分になっちゃって。」
「だからってなんで私なんでふか〜。」
しかし、そんなラキュリアの叫びはフィフィには届かず。
「二話続いてこういうオチでふか〜！？」
結局またもフィフィにいただかれてしまうラキュリアだった。
だが、フィフィの奥底にある寂しさをなんとなく感じ取っていた彼女は、
これでフィフィの寂しさがまぎれるのなら…そう思っていた…。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つーびーこんてぃにゅーど




第二話あとがき

とりあえずなんとか週一で頑張ろうと思っているユッザーですどうも。
今回はフィフィの探している「あの人」にまつわる話。
まぁ堕さいたまメンバーには誰だかばればれなんですが（苦笑）
しかしフィフィがだいぶ壊れている気がします。
「あの人」のせいなんですが…。
それにしてもラキュリア哀れですねぇ。
もうちょっと彼女の扱いをよくしてあげようと思ったり…。
次回からは、一話完結でないお話になっていきます。
うまくかけるかな〜とか思いつつ、また次回をお楽しみに。