Actors of Juveniles　〜フィフィ編〜



第三話「すれ違い超特急」前編


「ふぅ〜やっとついたね。」
「そうでふね。早く宿をとってゆっくり休みたいでふ。」
「うんうん。ゆっくりとお風呂に使って…」
「一緒に入るのは嫌でふよ。」
「え〜。」
憧れの「あの人」を探して、次なる町へとやってきたフィフィと、その友ラキュリア。
もう日も暮れており、今日のところは宿をとって休もうと思っていた。
しかし…
「…フィフィ、何か聞こえませんでふか？」
「えー、ふぃふぃには何も聞こえないけど？」
「いや、確かに聞こえまふ…こっちでふ！」
ラキュリアはふぃふぃを引っ張って走っていく。
どうやらその方向には裏路地があるようだ。
「……で…から…お会……な…の…ご…慮願え……かな。」
かすかながら声が聞こえてくる。あきらかに脅しの入った声だ。
「やっぱり何かあるようでふね。」
「…一体何なの〜？」
「しっ！」
フィフィを制すと、ラキュリアは少し身を乗り出して路地裏をのぞいてみる。
あきらかに怪しい三人の男が、一人の少女の前に立っていた。
少女は壁を背にしており、もう後がない状態だ。
「あきらかに怪しいでふね…。」
ラキュリアに続いてフィフィもその様子をのぞいてみた。
「おっ、あの娘かわいい〜。助けよ〜。」
「なんか動機が不純な気がしまふが…賛成でふね。じゃあいち、に、さんで行くでふよ。
　いち、に、さん…」
「だぁ〜！」
フィフィが意味のわからない叫び声を挙げつつ、男の一人に体当たりを仕掛ける。
小柄なフィフィだが、なにしろ超がつくほどの馬鹿力である。
男は吹っ飛ばされて壁に激突した後、少女の隣に倒れた。
「ちょっとやりすぎたかなぁ。」
「ちょっとじゃないでふよ…。」
フィフィにツッコミを入れつつ、ラキュリアは銃を構えて残る男の前に立った。
「貴様ら、何者だ！」
「通りすがりの聖職者でふ。とりあえず見逃すわけには行かないでふ。」
「そうだよ〜可愛い娘をいじめるのは許さないよ〜。」
「ちっ！」
男は舌打ちすると、懐に手をいれ銃を取り出そうとするが…
「無駄でふよ。」
ラキュリアの放った弾丸が、あっさりとそれを弾き飛ばしてしまった。
「さぁ私がおとなしくしているうちに逃げたほうがいいでふよ…。
　人間を撃てる機会なんてそうそう無いんでふからね…。」
ラキュリアが怪しく微笑む。
その瞳の奥にはかすかに狂気が宿っていた。
「くそっ…覚えてろよ…。」
男達は逃げようとするが、ラキュリアはその足元に発砲した。
「うおっ！？」
「そこの気絶してるのもちゃんとつれてって欲しいでふ。
　まぁ蜂の巣にしていいのならそうしまふけど…。」
「わ、わかった…。」
男のうち一人が、気絶した男を担ぎ上げ、いそいそと去っていった。
見た目かなり情けない。
「ラキュリアすご〜い。」
ぱちぱちと拍手をするフィフィ。
ラキュリアが見せた普段とは違う一面を、全然気にしてないらしい。
「そうでもないでふよ…ところで大丈夫でふか？」
ラキュリアがにっこりと微笑む。
少女は先ほどまでとのギャップに少し戸惑った様子だったが、
「はい、助けていただいてありがとうございました。」
と、ぺこりとお辞儀をした。
「えへへ、可愛い娘のためなら“たとえひのなかみずのなか”だよっ！」
フィフィが無い胸をそらして言うが、そもそも言葉の意味が分かっているのかどうかさえ怪しい。
「あの…なにかお礼が出来ればいいんですけど…。」
「そうでふね…あっこの町に宿はありまふか？」
「一応泊まるところはあるんですけど、本当にそれだけのところですね。
　そうだ、私の家に来ませんか。
　広くは無いですけどお風呂もありますし。」
「えっいいの〜？」
「はいっ。是非来てください。」
「それじゃあお言葉に甘えさせてもらいまふかね。
　あっ、そういえば自己紹介がまだでふね。
　私はラキュリアといいまふ。」
「ふぃふぃだよ。よろしくね。」
「私はジェンヌといいます。よろしくお願いします。ラキュリアさん、フィフィさん。」
そして、フィフィたちはジェンヌに案内され、彼女の家に向かった。

ジェンヌの家は、決して裕福そうには見えなかったが、そこそこの暮らしはしてるようだ。
聞いたところ彼女は現在18歳。親兄弟とは離れて暮らしているらしい
ちなみに「あの人」について彼女に尋ねたが情報は無かった。。
ジェンヌはお風呂を勧めてくれたが、男達に追い込まれたときに転んでしまったようだったので、
先に入ってもらうことにした。
ラキュリアは荷物を整理してベッドに腰をかけると、
「ふぅ。ひさびさにゆっくりできまふねフィフィ。…フィフィ？」
フィフィはいつの間にやら部屋から姿を消していた。
この場合だいたい予想できることは…。
「フィフィ〜！」
慌てて部屋を飛び出して風呂場に向かうラキュリアだった。

「ふぅ…。」
ジェンヌはゆっくりと湯船に浸かっていた。
突然脱衣場の扉が開いた音がすると、一人の人影が入ってくる。
体型からするとフィフィのようだが…。
「フィフィさん？」
「うん、そうだよっ。」
フィフィは明るく答えると、服を脱ぎ始めたようだ。
「一緒に入るには狭いですよ？」
「いいのいいの〜」
そしてさっさと風呂場に入ってきたかとおもうと、
「やっほ〜」
無理やり風呂桶にに入ってしまった。
さほど大きくないためジェンヌとは密着した状態になる。
「あ、あの…私でますから…。」
ジェンヌは少し顔を赤らめて湯船から出ようとする。
もちろん「その気」はまったくないジェンヌだが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしいらしい。
「いいんだよ。ふぃふぃは一緒に入りたいんだから。」
「えっ、えっ！？」
「ふふふ…可愛いよジェンヌさん…。」
フィフィはジェンヌの顎を軽く持ち上げ、その唇を奪おうとするが…。
「フィフィ〜！何やってるんでふか〜！」
ラキュリアが慌てた様子で飛び込んでくる。
手にはしっかり愛用の二丁拳銃を持って。
「リアだめだよ、お風呂に入るには服脱がなきゃ。
　あとそんなぶっそうな物もだめだよ〜。」
「そうじゃないでふよ！」
「あ、あのいったい…？」
ジェンヌはいまいち事態が飲み込めてないらしい。
「フィフィは…その…同性愛者なんでふ。
　だから、ジェンヌさん気をつけないと襲われまふよ？」
「ええっ！？」
途端に背筋に悪寒が走るジェンヌ。
まぁ普通はそうだよなぁ…。
「リアちゃんしっとしてるのぉ？」
「違いまふよ！あとちゃんづけはやめるでふ！
　ともかくさっさとでまふよ！」
「うわーん、リアのいじわる〜」
ラキュリアはフィフィを湯船から引きずり出すと、ずるずると引っ張っていった。
「………（滝汗）」
そんな二人の様子を、ジェンヌは唖然と見送ったのだった。

「うぅ〜リアひどいよ〜」
「酷いのはフィフィでふ。まったく何考えてるんでふか…。」
「うー、いいもんまだ夜はこれからだし…。」
「フィフィ！」
「じゃあかわりに一緒にお風呂入ってくれる？」
「嫌でふ。」
「じゃあジェンヌさんのこといただいちゃおうかなぁ…。」
「うっ…」
たぶんフィフィはやると決めたらやるだろう。
ラキュリアにはやる気満々なフィフィを妨害しきれる気がしなかった。
で、結局。
「わかったでふ…でも一緒に入るだけでふよ？」
「は〜い。」
もちろん身体が密着するような状態で、入るだけですむわけもなく。
結局いつものオチになるのだった。
「おんなじオチを繰り返すのはやめるでふ〜！」
「ふふふ、“いやよいやよもすきのうち”？」
「そんなわけないでふ〜！」
合掌。

で、そんなこんながあった後。
フィフィ達は、ジェンヌのつくった夕食をご馳走になっていた。
「うんうん、おいしい〜。」
「いえ、たいしたものも出来なくてごめんなさい。」
「そんなことないよ〜。
　あとはジェンヌさんも食べたいんだけど…。」
「え゛？」
「フィフィ！」
「冗談だよ〜。あっところでさっきの男の人たちなんなの？」
「なんかはぐらかされた気もしまふが、まぁいいでふ。
　私もその事は気になりまふね。」
ジェンヌは一瞬考え込んだような素振りを見せると、
「たぶん人攫いとかなんかじゃないですか？」
と、答えた。
しかしラキュリアには、男達がなんかしらのことでジェンヌを脅していたかのようにしか思えなかったのである。
とはいえ、ここで聞いたところでジェンヌは答えてはくれないだろう。
結局それ以上そのことについて聞くのは止めた。

翌日。
「それじゃあありがとうございましたでふ。」
「ありがとね〜。」
「いえ、もし今夜もここにとどまるようでしたらまたいらしてください。」
フィフィ達はジェンヌの家をあとにし、「あの人」の情報を集めるため人通りの多いところに出てきたのだが…
「ジェンヌさんのこと少し気になりまふね。」
「そうだね。少し聞いて回ろうか？」
「いいんでふか？」
「うん。もちろんあの人のこともちゃんと聞いてね。」
「わかってまふよ。」
こうして、二人は手分けしてあの男達のことやジェンヌについても聞きまわることにした。

「どうやら、ジェンヌさんはこの町の貴族の息子に恋をしてるようでふね…。
　相手のほうもその気のようでふけど、相手の父親が反対しているっと。
　そうなるとあの男達はたぶん…。」
「詮索はそこまでにして。」
「！？」
ラキュリアの首すじに伝わる冷たい感触…。
「…なんのつもりでふか？」
「それはこっちの台詞よ。無用な詮索はよして。」
「…予想は大当たりのようでふね。」
「余計なことは言わないほうがいいよ…死にたくないのならね。」
「やれるもんならやってみるでふ！」
そう言うとラキュリアは一気に振り向こうとする。
声の主はラキュリアの首にナイフを突き刺そうとするが…。
「私だって、新しい魔法くらい覚えてるんでふよ。メディ？」
「ちっ」
ナイフは突き刺さることはなかった、ラキュリアを守る加護の魔法によって。
通常の防御魔法とは違い、あらかじめ自分にかけておくシールドタイプのものである。
「久しぶりでふね。またそういう仕事をはじめたんでふか？」
声の主はラキュリアよりも背の低い、ホビットの女だった。
「ふんっ、余計なことはしないでよリア…。
　今日のところは見逃してあげるよ。」
そう言って、メディと呼ばれた女は尋常ならざる速さでその場を去っていった。
「……メディ…。」
あとには心配そうに彼女の名を呟くラキュリアの姿だけが残った。

その後、フィフィとラキュリアは合流してお互い集めた情報を交換し合った。
「あの人」に関する情報はやはりえられなかったが、
ジェンヌが貴族の息子「グリフィス」に恋をしていること、
その父親が二人の仲を引き裂こうとしてることは明白であろう。
しかし、その夜のこと…
「ごめんね〜また泊めてもらっちゃって。」
「いえ、気にしなくていいんですよ。」
フィフィ達は再びジェンヌの家に泊まって夕食をとっていた。
「そういえばジェンヌさん好きな人がいるんだって？」
「え、あ、はい…。」
フィフィの突然の質問に驚いて答えるジェンヌ。
「たしか…グリフィスさんでふか？」
「えっ、違いますよ。私が好きなのはアルフさんという方です。」
『ええっ！？』


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　…to be continued.




第三話あとがき

今回は前後編です。（前中後編になる可能性もあるけど）
なんかフィフィよりラキュリアが目立ってますねｗ
今回の小説書き始めてから、ラキュリアの設定は面白いほど膨れ上がりました。
いつか主役の座奪うかもなｗ
それでは次回後編に続きます。